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二人の永遠の夏休み
> 蛇足編 > うーちゃんの話 > 4
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またエロいです。
それでね、夢はそこで終わって――次に目を覚ました時、僕はね、もう眠くならなかった。
目が覚めたのは真夜中でね、僕は、ずっと見ていたよ。怪しい蛍光色の液体がね、管を通って僕のボロボロの腕の中に落ちてく所。ずっと、ずうっと。
でもね、来ないんだ。僕と一緒にこの中に居た筈の沢山の頭が。誰も、僕に逆らわないの。居ないんだ。
そしたら心がぱぁって明るくなって、まだ暗いのに部屋の中がよく見えるようになってね。――そして唐突に閃いた。
何で眠くならないのか、怖くないのか。
僕はまた、王座に戻って来たんだって。他の奴らを取り込んで、僕は僕として僕の主に返り咲いたんだ。
ぜぇーんぶ、ちぃちゃんのおかげ。ちぃちゃんが居たから、僕は僕になれたんだ。それが分かって、僕は膝を抱えてね、それでニィっと笑ったの。
――ちぃちゃんが、欲しいと思った。
僕の王冠、僕の星。僕の形を教えてくれる人。身体を無くした、僕の唯一の財産。僕の物。ぜぇんぶ。
どうやったら手に入るのか、考えると全然眠くならなくて、ほっぺたが痛くなるくらい笑い続ける頃、天井の明かりがついた。
新しい朝がやってきた。
それでね、朝一番に、僕の様子を見に来た博士にね――小さい生き物のおばさんにね、僕は言ったんだよ。
「博士、ちぃちゃんと僕を見つけたよ。僕はうー、ちゃんだ多分」
「ええそうね……あなたの殆どは蛇で安定したみたい――会えて嬉しいわ、私のウロボロス」
「うん、ただいま、おばさん」
「……記憶が混乱してるのね。私に身内は娘しか居ないわ」
「あれ、僕は博士とお話したことあったのかな?」
「さぁ? 奇声を発して噛みついた事はあったけれど」
「えー、覚えてないや」
「……」
博士は僕が起きていることには驚いたみたいだったけれど、後はもういつも通り。一言二言を話したら、僕に目をくれず、僕や、ベッドに繋がっている機械の数値を見るばかりで、ついに相づちを打つことさえしなくなった。
「ねーえー、はかせー」
「……」
しかも、折角聞いてみたいのに、博士は顔を上げてくれない。だから僕は、ベッドの上で胡座をかいて、ユラユラと膝を揺らしてみた。
身体は、初めて僕の思い通りに動いた。今まで手足に鉛が詰まってるみたいだったのに。
試しにベッドに立ち上がってみたら、初めて博士の背中の向こう側が――今まで、博士やベッド横の機械の陰になってて見えなかった机に置かれた写真立てが見えたけれど――夢の中のちぃちゃんそっくりの顔をした、へちゃむくれた女の子の写真が見えたけどね。
あのね、ゆらゆらしてすぐに脚から力が抜けて、お尻からベッドに転んでしまったんだ。
「あはは、全然立てないよぉ、へーんなの」
「……」
「ね、博士――ちぃちゃんは、僕のお嫁さんは元気かな?」
「……なんの、ことかしら」
「えーっ、約束したじゃん。ちぃちゃんをお嫁さんにしたげるって」
「……思い違いじゃないかしら。ウロボス、まだ眠くないんだったら、これからお薬を飲みなさい」
「はぁーい」
博士はそう言って、何かをメモしていたノートを畳んで立ち上がると、すぐに部屋を出てってしまった。
そうして僕は、きっかり三秒を数えたあと……くくく……ははは……嬉しくて笑っちゃった。
だってね、僕はね、ちぃちゃんをお嫁さんにするだなんて、そんな約束した覚えはないんだよ? でも僕は見たの。ちゃんと見えた――博士が、僕がそう言ったとき少しだけ、浅い呼吸をして体温を上げたの。
くくく…っ、馬鹿なんだから博士。ばぁか。
自分でちぃちゃんを捨てた癖に、ちぃちゃんを捨てきれなかったから、こうやって僕に取られちゃったんだ。
あのね、ちぃちゃんのお耳に、また内緒のお話ね?
――見えるんだ、僕にはね、人間の心がね。僕、人じゃないから。
ちぃちゃんと結婚の約束をした、本物の「従兄のうーちゃん」じゃあ、ないから。それっぽく復元した、別の生き物だから。
ちぃちゃんの嘘や本当も――この柔らかいおっぱいの下の心臓が教えてくれるし、このちんまいお鼻も、可愛いお口も……んふ。みんなね、僕の身体に見せてくれるよ。ちぃちゃんの心を。
あのね、だからね、嘘つきな博士が僕に教えたんだ。ちぃちゃんが僕の物で、僕のお嫁さんだって。
ちぃちゃん、ちぃちゃん、僕のこと好き? 好きだよね? 僕、ちぃちゃんに僕を全部あげたんだもん。
あのね、ちぃちゃんちいちゃん……愛してる。
っぁ……くくっ、ちぃちゃん感じちゃったぁ? 僕に、耳、ぺろっ、はむってされて?
やらしぃー。好き? 僕のことそんなに好き? ね、こんなことしても寝てるくらい好き? 嬉しいなぁー。
ねーえー、僕にもっともっと一杯ちょーだい、可愛い可愛い、僕のお嫁さん。
眠ったままでいいからさぁ、もっと脚を開いて。お腹の奥で僕のことぎゅーってして。僕の形を教えてよ。
そう……いいこいいこ。おっぱいも、アソコもほっぺたも、脚も、お尻も。僕の形を覚えて受け入れて、教えてちぃちゃん。
僕が何なのか、どれだけ僕が好きか、君の中にどれだけ僕が残っているのか、ナカに僕の出されるとどんな気持ちか。
ふふっ、ねぇ、僕は馬鹿な男だからね、こんな風に思うの。ちぃちゃんの中に取り込まれてちぃちゃんと一つになってしまいたいって。
出来るならね、僕を一度ドロドロに溶かして、全部ちぃちゃんの良いように作り直して欲しいんだ。
あの日――君が、僕に、名前を付けてくれたみたいにして。あの日、君がお母さんの前でいやらしい子になってみせたみたいに。
僕が、君と一つになって、ドロドロのぐっちゃぐちゃにして、『脱皮』の時と違って、初めて自分の意志で気持ちよくなったように。
――全部、作り直して欲しいって。僕が壊しちゃった、この世界と一緒に。
んふふっ……よぉし、決めた。次に『脱皮』する時は、ちぃちゃんに握ってて貰おうねっ。僕が、僕を見失わないように。
んっ……も、限界かも。いっぱい出ちゃったらごめんねちぃちゃん。
好きだよ、大好き。愛してる。一生、一生大好きだよ。
世界が終わるまで――当然だよね、僕らが死んだその時が、この世界の終わりなんだもの。
ねー、まるで絵本の中みたいだねぇ。僕とちぃちゃんだけが登場人物で、だぁれもいない。
だから、二人で、二人だけの世界で、一生、幸せに暮らして行こう? ね?
世界の終わりまで。
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