本編
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前日碑 - 連載を意識して書いた部分です。
うーちゃんの独白で、眠りにつくまでの世界の断片です。
僕の見た夢 - 2013/09/16更新
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あらすじ:

ウロボスこと、うーちゃんが10年ぶりに目覚めたその時。
世界は終わり、病院の地下にある秘密結社は天井をぶち抜かれて瓦解し。
一緒に育った線の細い幼なじみはガタイのいい義手の男になり。

そうして、目覚めたばかりのうーちゃんの足下に跪いてこういいました。

「おはようございます、首相」と。

見た目中学生の怪人×ガタイのいい義手の悪の頭領の、ぐだぐだたまにヘヴィな日常風景。

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即興小説から。加筆。R15
お題:同性愛の駄洒落 制限時間:15分
「ちぃちゃん! 僕は女の子をはらますのはつかれました!!」
「………」

 いつものまばゆい笑顔で、挙手と共に答えた我が首領。彼の言葉に俺は、来週一杯の『巫女』を選んで貰う為に用意した名簿を持って沈黙する。

 円環の蛇ウロボスと、その力を持つ美貌の少年姿の怪人を首領に置く我が組織は、はっきり言って人数が少ない。

 前身である悪の組織の使っていた地下の王国をそのまま引き継いだ我々の同志は、どうしたって少ないのだ。おい、今のは駄洒落じゃないぞ、うーちゃん。

 そしてまぁ、我々の小さな国はいわば王制を敷いた小さな宗教国家のような物である。
そして、小さな国の国民の義務が、国民または臣民を増やすことであれば、その王国の現人神の義務はというと……。

「ねーぇー。ちぃちゃん、いいかげん諦めてよぅ! ちぃちゃんの言うように毎日日替わりで女の子とエッチしてるけど、子なんて生まれないじゃない。僕はきっと、作られた時に去勢されちゃってんだよー」

 それに僕は子どもなんて要らない、ちぃちゃんの子なら育てると胸を張る幼馴染に、俺はいよいよ頭が痛くなる。

 ちいさな宗教国家の現人神の義務は、その祝福された血を次代に繋ぐこと。

 そして、それこそが神であるうーちゃん……ウロボスの地位を高めることに繋がり、ついでにウロボスの強い血を受ければこの組織を本当に国にすることも可能であろう。

 そう判断した俺は、うーちゃんに毎日、年の近い女の子をあてがうことにした。

 うーちゃんには義務だから、喜んで身を捧げる女どもには、栄誉である、と言い含めて。
 最初は、生殖という得体の知れない行いに恐怖してたうーちゃんは、うーちゃんの「ちぃちゃんがお手本見せて」の通りに、目の前で教えて、ついでに世の支配者に習って経験豊富な女を教育係として何とかなった。

 気に入った女子が出来るまで……と、日替わりに女を侍らせてはいても、未だお気に入りが出来ないのは悩み所だが。
 もし、うーちゃんが一人を愛するようになったら、その方が……とそこまで考えて思考を止める。

「でも、うーちゃん、射精は出来るだろ? それに、気持ち悪い訳でもない」
「そう、だけどさぁ……」

 そこでうーちゃんは何か言いたげにじっと俺を見上げ、困ったように肩を竦め、珍しく何かを言いよどんだ。

「どーした、うーちゃん? もしかして生娘は好みじゃなかったか?」
「えっと、違うけど……」
「そうか」

 そう素っ気なく応えたものの、正直、経験豊富な女を寄越せと言われなかったことに、俺は内心でほっとしていた。
 というのも、今、うーちゃんに求められていることというのは『純粋なウロボスを繁殖させること』であり、ぶっちゃけ言うと、他の男と関係がある可能性のある人間は極力避けたいのだ。
 普通の人間同士の交合なら、女の側に監視でも付ければいいのだろうが、生憎、うーちゃんは未だ生態の分からないウロボスだ。
 犬や猫のように、彼のDNA情報が先に女に出した方と混ざり合ってキメラが生まれる……なんてこともあるかも知れない。
 なので、生娘を用意し、毎度交合の度に俺が立ち会い人となっている訳なのだが。

「うん……」

 そう答えたうーちゃんは、白い頬を、先ほどの行為でも見られなかったようなバラ色に紅潮させ、また何かを言いよどんで目を伏せた。

 その何かを言いよどみながら照れているうーちゃんを見てふと、うーちゃんがこの通り可愛いせいで、口さがない連中がしている、俺に関する噂を思いだした。
 曰く、「首領は、本当はウロボス様を抱きたいから『儀式』に立ち会うんだ」というもの。

 ――もしかしたらうーちゃんは、それで余り乗り気では無いのかも知れない。
 確かに、気心の知れた仲とはいえ、最中ずっと見られるのは気まずいし、何かしらの下心を感じて勃つ物も勃たないかも知れない。

 ……少なくとも、俺の見る限り、うーちゃんは、そういう行為を作業と割り切っているのか、腰を入れながら息一つ乱さずこちらに話しかけて来たりする訳だが。

「もしかして……俺が居ない方がいいか?」
「ううん! 居てくれた方がいい!!」

 だけれど、俺がそう聞いた途端、それまでもじもじしていたうーちゃんは、弾かれたように顔を上げ、そう強く言い切った――かと思えば、また顔を赤くして俯いた。

「あの、その、ね……ていうかさ、ち、ちぃちゃんが居ないと、な、何か分からないけど、僕、その、ね」
「あぁうん、俺が居ないと何?」
「えぇとその、その……」
「何、言ってうーちゃん。うーちゃんにストレス持たすの、俺辛いよ」
「え、辛いの? ちぃちゃん」
「まぁね」

 そう言って、屈んで目線を合わせようとしたら顔を背けられた。

「――で、何? 言わないと、言うまで聞くよ」

 それに腹を立て、今度は屈んだまま、うーちゃんの両肩を押さえ込む。
 華奢な少年の姿の癖に、実際俺より力のあるうーちゃんは、それを振り解こうとせず、暫くもじもじと身体を揺らした後、目尻を赤く染めたまま、意を決した様子で俺の顔を見た。

「た、たないし……っ!」
「え、なに、フラグ?」
「ち、ちいちゃんが見てないと勃たないんだってば!! 一人でも、何人とやっても駄目なのっ!!」
「お、おう……」
「ねぇもういいでしょ! 僕帰る!!」

 うーちゃんは大声でそう叫ぶと、そのまま部屋を飛び出して、脱兎の如く駆けて行った。


 ……うーちゃんの、羞恥の場所が分からない。
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